8ヶ国語を話すマルチリンガルの個人ブログ

アデル聴きたさにロンドンまでひとっ飛び

会社員時代に管理しきれないほどのタスクを「To Doリスト」で管理していた私は大のリスト嫌い。周りで流行っている「やりたいことリスト」さえ作るのも拒否している。でももし作るとしたら常に上位をキープしているのが「ミュージカル、コンサート、スポーツを”本場で生観戦する”こと」。ミュージカルならブロードウェイかウェストエンドでしか観たくないし、スポーツ観戦も”テレビじゃイヤ”なのだ。一流のものこそ、生で観て触れて体感することが大切だと思うから。

独立してから海外に行く機会が減ったこともあり、しばらくライブやコンサートには行っていなかったのだけれど、今年3月高橋洋子さんからお誘いいただき、彼女が出演したコンサート「シン・ゴジラ対エヴァンゲリオン交響楽」を観に行く。シン・ゴジラもエヴァンゲリオンも観たことがなかったけれども(汗)久々のライブ感溢れる歌声に感動!次に行きたいアーティストといえばアデルしか思い浮かばなかった。今年グラミー賞で5冠に輝き今が一番”旬”なのにも関わらず「育児に専念したいからしばらく休業する」と宣言しているアデルは、まだ20代なのに引退説が常に囁かれているアーティスト。「子供たちから離れたくないから」とワールドツアーにもあまり積極的ではなく、日本へも来ない。3月には日本から比較的近いオーストラリアとニュージーランドまで来ていたものの、日程が近過ぎてスケジュールを空けられなかった。「ならば本拠地のロンドンへ」とチケットを探してみたところ、意外にも’すんなり取れて’しまった。

私がアデルを好きな理由は「本物だから」。アデルは”脱がない、踊らない、アルバムも2〜4年に一枚。創作活動を一つひとつ終えてからアルバムを出す”というアーティストらしいアーティスト。そして世界で最も愛されるアーティストなのに商業主義にブレず常にマイペース、と言う印象を受ける。アルバム「19」で衝撃的なデビューを飾ってから9年、本国ではやはり国民的大スターのようで、イギリス入国審査の際も”What is your purpose of visit?”の問いに”To see Adele concert.”と答えると「毎日アデルのコンサートにってたくさん海外からやってくるよ!」審査官も誇らしげですんなり通してくれた。



2016年2月からスタートしたツアーは、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドを廻り、母国イギリスで迎えたラスト4回分のチケットも完売。5月アリアナ・グランデのコンサート後に爆弾テロもあったことから、当日は警戒態勢が厳しいかと1時間半前にはウェンブリースタジアムに着いたけれど、意外と警備はそれほど厳しい訳でもなく。20時スタート直前になってようやく会場は満員になるほど。最大9万人が入ると言うイギリスで最も大きなサッカースタジアムはフィールドも含めていっぱい。観客のほとんどは手にビールやワインを持ちながら、ホットドッグやフライドポテトにかじりついている。コンサートというよりまるでサッカー観戦。

22時過ぎになってようやく暗くなるイギリスの夏に行われる半野外コンサート。外の気温が15度少しという中、観客の熱気と感動で少しずつ寒さは感じなくなるものの、アデルの歌は静かな曲がメイン。しかも2−3曲に1回5〜10分のトークが入る。内容は曲の背景だったり、今回のツアーについてだったり。印象的だったのは「すごく緊張していて歌詞を忘れそうだから、一緒に歌って」と繰り返しアデルが言っていたこと。そして私たちのすぐ後ろの人は全曲アデルと一緒に歌っていた。

最後の曲を歌おうとする際、アデルはそれまで何度も繰り返した感謝の言葉と共に言った。”After July 2nd, I will take a break and be a Mom. I am very excited about it. I may never see you again in live, but I will not give up to sing.”(7月2日以降はお休みしてママになるの。とても楽しみにしているわ。もうみんなとライブで会うことはないかもしれないけれど、歌い続けると思う)やっぱりもう引退するつもりなんだと知って寂しいと同時に、ライブのために少々無理をしてでも日本からはるばる来られて良かったとしみじみ。

※後日談
6月28日、29日とウェンブリースタジアムで観客を魅了したアデルは、喉に異変を感じて医師にアドバイスを求めたところ「喉を痛めておりコンサートを続けるとさらに悪化する可能性も」と診断を受け、やむなく7月1日、2日に予定されていたライブを延期したそうです。”I’m devastated. I am sorry. Please forgive me.”と綴られる彼女のメッセージからは、彼女の打ちのめされた心情が現れています。ファンとしては早く良くなって、また、私たちの前に戻って来て欲しいなと願います。